キットの読書録


by osampopremium
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螺旋階段のアリス





加納朋子
「螺旋階段のアリス」
文春文庫
500円(税込)
★★★☆☆

 大企業のサラリーマンから憧れの私立探偵に転身した仁木、事務所を構えたはいいけれど、依頼人はいない。迷い込んだのは、少女にしか見えない助手志願の女の子安梨沙。中年シロート探偵と少女との探偵稼業が始まる。
 小さな謎解き七編で構成された短編集である。「不思議の国のアリス」に登場するキャラクターに託して物語が語られる。特筆すべき大事件が起こるわけでもなく、切った張ったの活劇があるわけでもない。謎解きという点ではそれぞれに一ひねりが効いていて面白いが、読後の印象は「ふ~ん」であった。鮎川哲也賞、日本推理作家協会賞の受賞作家であるが、イマイチ。
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# by osampopremium | 2012-03-18 01:39 | 加納朋子

果つる底なき





池井戸潤
「果つる底なき」
講談社文庫
680円(税込)
★★★★★

 江戸川乱歩賞受賞作であると同時に、銀行ミステリという新分野を切り開いたという点でも、特筆すべき一作である。元銀行員の手になるだけに、金融の仕組みをトリックに仕立てる手腕はさすがと言うべき。
 「これは貸しだからな」という謎の一言を残して、債権回収担当の同僚坂本が死んだ。車の中で蜂に刺されたショックが死因。警察は事故と殺人の両面から捜査を開始するが、伊木は坂本の業務を引き継ぐ中で、常識では考えられない痕跡に気付き、これが殺人であるという確信を抱く。単独で調査を進める伊木が直面するのは、「果つる底なき」銀行の暗闇であった。
 手形の仕組みであるとか、和議であるとか、あるいは銀行の業務内容であるとか、そういう専門知識がない人にはちょっと読みにくいと思う。しかし、そういう金融の世界がトリックになるという点で、きわめて鮮烈なミステリが構成されている。ぜひ読んでおきたい一冊と言えるだろう。
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# by osampopremium | 2012-03-17 01:37 | 池井戸潤

降霊会の夜





浅田次郎
「降霊会の夜」
朝日新聞出版
1,575円(税込)
★★★★☆

 浅田次郎の最新長編である。勇んで読み始めたのだが、退屈した。文章はさすがだが、お話自体が面白くない。ハズレ。
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# by osampopremium | 2012-03-15 01:36 | 浅田次郎

ミス・ジャッジ





堂場瞬一
「ミス・ジャッジ」
実業之日本社文庫
720円(税込)
★★★★★

 堂場瞬一といえば警察ものとスポーツものだが、特にスポーツものに名作が多い。この「ミス・ジャッジ」もスポーツフィクションである。レッドソックスの先発投手としてメジャーデビューを果たした橘は、デビュー戦でアンパイヤのマスクをかぶった竹本の、故意とも見えるミスジャッジのお蔭でリズムを崩し、勝てない日々を送るハメに陥ってしまう。竹本と橘は高校、大学の先輩後輩、若き日の確執を引きずる竹本に対し、大リーグでの生き残りをかけた橘の挑戦が始まる。
 野球というスポーツに賭ける男たちのドラマである。試合の場面が多いので、野球音痴にはちょっととっつきにくいと思われるが、野球好きには逆にたまらんだろう。スポーツに携わる者の強烈な自負心と孤独が丹念に描かれており、抜群に面白い小説に仕上がっている。
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# by osampopremium | 2012-03-13 01:35 | 堂場瞬一

不屈の弾道





ジャック・コグリン
ドナルド・A・ディヴィス
「不屈の弾道」
ハヤカワ文庫
早川書房
1,029円(税込)
★★★★☆

 米海兵隊所属の名スナイパー、カイル・スワンソン一等軍曹が主人公のシリーズ第一弾である。ボブ・スワガー軍曹シリーズなど、アメリカの小説には狙撃手を主人公にしたものが多いが、新たな一ページを加えるものとして記憶にとどめておく価値はあろう。
 例によって、狙撃手の真の敵は闇の「陰謀」であって、戦場での実戦と同時に、裏でうごめく陰謀をどうやって撲滅するかという点も読みどころになるわけだが、この作品に関しては、その陰謀が荒唐無稽で、困惑させられた。
 著者は元本職のスナイパーである。さすがに実戦場面は読ませる。なんでも、ハヤカワの「2011年最も売れた本フェア」に入った作品であるらしい。第二作以降も順次翻訳が出てくるものと思われ、出たら読んでみるつもり。
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# by osampopremium | 2012-03-11 01:30 | ジャック・コグリン

カタコンベ





神山裕右
「カタコンベ」
講談社文庫
660円(税込)
★★★☆☆

 これも江戸川乱歩賞受賞作品。ケービング(洞窟探検)という特殊な世界が舞台である。
 新潟の山中に発見された未知の巨大洞窟に調査隊が入った直後、折からの豪雨で洞窟の入り口が崩落し、脱出することも救助隊が侵入することもできなくなってしまう。洞窟が水没してしまうまでのタイムリミットは推定5時間、それまでに救出できなければ調査隊は全滅だ。
 5年前に自らのミスで相棒を死なせた過去を持つケープダイバーの東馬は、閉じ込められた調査隊の中にその相棒の娘がいることを知り、単身で救助に向かう決意を固める。別の洞窟と地下水路で繋がっている可能性が高いと踏んで、危険を覚悟の単身侵入を図るのだ。しかし、洞窟の迷路には5年前の事件の真相と、殺人犯が潜んでいた。
 洞窟探検という、あまり馴染のない冒険世界を垣間見る興奮が味わえる。ただ、事件の謎解きという部分に関してはあまりにお粗末、ミステリになっていない。二兎を追うものの末路はこんなものであろう。
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# by osampopremium | 2012-03-07 01:33 | 神山裕右




あさのあつこ
魚住直子他
「きみが見つける物語 ティーンエイジ・レボリューション」
角川書店
1,260円(税込)
★★★★★

 今が旬の作家たちの短編を集めたこの「きみが見つける物語」シリーズはすでに10冊以上上梓されているが、この「ティーンエイジ・リボリューション」には女流作家ばかり6人の作品が収められている。角田光代「世界の果ての先」、あさのあつこ「薄桃色の一瞬に」、笹生陽子「電話かかってこないかな」、魚住直子「赤土を爆走」、椰月美智子「十九の頃」、森絵都「17レボリューション」の6篇である。それぞれに共通テーマがあるわけではなく、あくまで独立した短編であるが、タイトルにもあるように、いずれも主人公はティーンエイジの女の子であり、少女のみずみずしい視点が生き生きと躍動して描かれ、爽やかな読後感をもたらしてくれる。印象深いアンソロジーであった。
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# by osampopremium | 2012-03-05 01:28 | あさのあつこ

東京ダモイ





鏑木蓮
「東京ダモイ」
講談社文庫
730円(税込)
★★★★☆

 自費出版を手掛ける出版社の営業社員槙野は、句集を出したいという老人高津に面会するため、舞鶴にほど近い町綾部を訪れる。話はとんとん拍子に進み、契約を残すだけ。槙野は原稿を預かり、老人が出した条件、「全国紙に広告を出す」件を詰めるため、いったん東京の会社に戻る。
 社内の根回しも上手くいって、出版の準備は整った。しかし、二度目に綾部を訪れた槙野を待っていたのは、老人の失踪という思わぬ事態だった。しかも、その失踪の原因は、舞鶴で起きたロシア人観光客の死亡事件であるらしい。
 殺人事件と老人の失踪という現代の謎と、そして、老人の原稿に書かれた過去が交錯しながらストーリーが語られる。原稿に書かれた世界、すなわち、終戦後のシベリア抑留という歴史の闇が今に引きずるミステリがテーマである。
 2006年の江戸川乱歩賞受賞作品。この作品が実質的なデビュー作と言っていい。著者にとっては初期の作品ということになるが、粗削りな部分もありながら、俳句の解釈に謎解きの要素を盛り込むなど、技量は申し分ない。大きな成長余地を感じさせる作品である。
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# by osampopremium | 2012-03-05 01:26 | 鏑木蓮

真夜中のマーチ





奥田英朗
「真夜中のマーチ」
集英社文庫
600円(税込)
★★★☆☆

 パーティー屋、ニセ財閥御曹司、謎の美女、3人の25歳の若者が、ヤクザ、詐欺師、中国人マフィアを相手に10億円の強奪を企てる。奥田らしい軽いタッチの文章ながら、痛快な犯罪ストーリーである。ちょっと軽すぎて、仕掛けも軽すぎた結果、そんなんあり~?の結末になった。名人奥田もたまにはコケる。
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# by osampopremium | 2012-03-04 01:24 | 奥田英朗

強奪 箱根駅伝





安東能明
「強奪 箱根駅伝」
新潮文庫
704円(税込)
★★★★☆

 大学駅伝チームの女子マネージャーが誘拐され、出場選手を交代させろという要求が届く。同時に、テレビ中継システムが何者かによってジャックされ、身代金の引き渡しを全国中継させられる。
 犯罪の進行と箱根駅伝の2日間がシンクロしつつストーリーが進む。スリリングな展開だ。ただし、テレビ中継システムというハイテクの世界に、残念ながらボクの理解力が追い付かない。犯人が仕掛けるトリックが理解できないわけで、こういう読者はお呼びじゃないんだな、というのが結論。
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# by osampopremium | 2012-03-03 01:22 | 安東能明