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by osampopremium
| 2012-03-02 01:19
| 橋本紘二
北林優
「アブラムスの夜
警視庁鑑識課」
徳間文庫
920円(税込)
★★★☆☆
公園でホームレスの焼死体が発見される。目撃者の話では、少年たちがなぶり殺しにしたらしい。しかし、その目撃者の行動にも不審な点が多いし、そのうちに、被疑者と目される少年が次々に殺されるという事件に発展する。警視庁鑑識課の女性警部松原と、はみ出し刑事権堂は、それぞれ違う角度から事件に迫る。
鑑識という、シロートにはちょっと分かりにくい警察活動を通して、少年犯罪の闇に迫ろうとするストーリー展開である。けっこう面白い。でも、事件そのものがきわめて陰惨だし、結末も後味が悪い。すかっとした読後感がないし、文体も重いので、読み終えた後に疲れが残った。作家は美人だし、警察小説の範疇にあってちょっと異質の分野を扱っているため、マニアの間ではけっこう評価の高い小説のようだが、ボクには敷居が高い感じがした。
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by osampopremium
| 2012-03-01 01:17
| 北林優
機本伸司
「メシアの処方箋」
ハルキ文庫
861円(税込)
★★★★☆
小松左京賞受賞の「神様のパズル」に続く長編SFである。地球温暖化の影響で増水していたヒマラヤの氷河湖が決壊した。そして浮かび上がったのは、なんと古代の「方舟」、樹木も生えぬ高地に文明の跡があったというだけでも驚愕ものなのに、その方舟の中から大量の木簡が出た。しかも、それらには不思議な蓮華模様が刻まれている。古代文字とも見えぬそれらの文様には、なんらかのメッセージが込められているようだ。
ということで、その謎解きと、謎が解けた結果として巻き起こる驚愕の事件が本書の読みどころである。ネタばれになるのでここから先は書けないが、なんともはや、SF作家ってのは、よくもまあこんな奇想天外なことを考えられるものだと開いた口がふさがらない。それに、たいへん申し訳ないが、科学音痴のボクには理解不能な部分が多々あって、ストーリーの面白さのたぶん半分も頭に入っていないと思われる。生化学だの遺伝子だの、そういう方面に詳しい人なら、おそらくすごく面白く読めるんじゃないかと思う。事実、この本、よく売れたらしい。
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by osampopremium
| 2012-02-27 01:15
| 機本伸司
池井戸潤
「鉄の骨」
講談社文庫
880円(税込)
★★★★★
池井戸淳の本は、一連の銀行小説は概して小ぶり(面白いけど)だが、直木賞を受賞した「下町ロケット」や候補となった「空飛ぶタイヤ」に代表される企業小説はスケールが大きく、読み応えも段違いだ。この「鉄の骨」も読んで後悔しない。吉川英治文学新人賞に輝いた一冊である。
現場で汗を流していた中堅ゼネコンの若手社員平太に移動命令が下る。行先は本社業務課、「談合課」と揶揄される部署だ。ゼネコン各社では脱談合を合言葉に体質改善の動きが出始めてはいるものの、談合なくして業界の存続はあり得ないのもまた事実、組織の防衛と正義感のはざまで悩みつつ、平太たちの崖っぷちの闘いは続く。
最後のどんでん返しまで、息も継がせぬという感じで切迫したストーリーが紡がれる。登場人物たちの性格付けもよく、物語に深みを与えている。読み応え十分の一冊であった。
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by osampopremium
| 2012-02-24 01:10
| 池井戸潤